僕があなたに出来る事 CM
令和5年某日
――――なんだって俺が北川電子に出向なんだよ。まったく最近、運なさ過ぎたぜ。
――――麗奈には婚約破棄されたし……。
黒髪をオールバックにした二重のややつり目の男が、眉間に皺をよせ険しい顔をしながら車を走らせていた。その男の名は近衛一臣。30歳。身長が170センチで痩せ型の筋肉質の体型をしていた。
「まったく……」
そう言うと同時に胸ポケットに右手を忍ばせハッとする。
――――そういや煙草やめたんだっけな。ガムでも噛むか……。
徐に胸ポケットから眠気覚ましの辛いガムを取り出すと、口に放り込み噛み始める。それとほぼ同時に眉間の皺が更に深くなる。
――――しかし、北川電子に出向なんて前代未聞なんだが……。
俺はそんな事を考えながら、愛車のGX87を北川電子に車を向け走らせていた。この時の俺は本当に運のなさに嫌気がさし、自分自身にムカついていた。
一層の事、死ねば楽になれるのかとも思ったのだが、俺に死ぬ勇気など無くこうして運命に従っていた訳だ。まったくもって不快極まりないとはこの事だ。
暫く走ると左手に北川電子の看板が現れ、俺は左折し駐車場の空いた場所に車を止めた。
一臣は車を止めると気だるそうに会社の中へ入り受付の女性に事情を説明し始める。
「あの、四十六銀行から総務課に出向して来た近衛一臣と申しますが」
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